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昭和天皇、退位せず
共産革命を憂慮した天皇
[単行本(ハードカバー)]更級 悠哉 (著)
発行日:2017年10月24日
頁数:282ページ
ISBN-13: 978-4434237478
定価: 1.500円+税
内容紹介
昭和天皇の誕生から崩御まで、その生涯をまとめた。その最大のエポックは、日本壊滅の危機を救った終戦のご聖断であった。平成天皇は天皇の座に執着せず退位を決意された。昭和天皇は母や弟たちからも退位を勧められたが断固拒否した。その理由の一つは退位による混乱に乗じた共産革命を警戒したからではなかったかと著者は考え、本書を書いた。
書評
フィクションとありましたが、史実をベースにしていますので、ノンフィクションと フィクションの中間に位置するものと思います。(司馬遼太郎の作品に近いかも?) セミフィクションと呼ぶよりは個人的には“理論文学”と呼びたくなりました。
物理学に理論物理と実験物理があるのは御存知と思います。
理論物理で理論的に新たな素粒子等を仮定して、その後実験物理で確認すると云うモノです。
僕は、いずれこの本の内容とそっくりな資料が出てくるのではないかと思っています。
さて、歴史は実は苦手でして(粗っぽく習い過ぎたからでしょうね)、その点では近代史の良い勉強になりました。歴史って何かを中心に据えて(今回は昭和天皇)その周辺の流れを論じると実に分かりやすいものだと言う事です。
この書は教科書としても楽しめるものだと思います。 歴史の苦手な(誰かさんみたいに)学生が読むと良いのでないかと思います。
次にこの書を読んで思ったのは、我々(全生物は)は、実に危うい偶然と必然のバランスの上で辛うじて生き延びてきたのだなと言う事です。
・太平洋戦争が起きていなかったら
・緒戦の勝利で早期の講和が成功していたら
とここまでは良いのですが、
・ソビエト軍が満州国境に張り付いていたら
・終戦が更に延びていたら
・ソビエトに北海道が占領されていたら
と、これら全てで昭和天皇の(変な言い方ですが)御世話になった事が良く分かりました。
鎌倉時代から天皇は実質的な支配者では無かったわけですから、それは大変な御苦労をされたのも良く分かりました。命が掛かっていたのだと思います。
昭和天皇に戦争責任があるかどうかの議論は終わらないと思いますが、戦争終結への (特に西側陣営にとって都合の良い形で)功績は多大なるものだと思います。
昭和天皇研究を進める際に、この書はテキスト(公正な視点で史実に忠実という点で)にもなるのではないかと思います。
最後になりますが、読み物としてはかなりのレベルで面白いものだと思います。
2018年2月 M.H 記
著者について
大学卒業後、メーカーの販売管理者としてドイツ他に約10年間駐在した。その折、英・仏・蘭・西・露等の宮殿や戦跡・国境を見て回り、欧州と日本が繋がる現代史執筆を思いたつ。帰国後推敲を重ねてきたが、日本が世界の主役になった昭和史上梓を決め、読者の批判を仰ぐことにした。ペンネームの更級悠哉は出世地に因む。