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  • 小説 異説親鸞伝
    [単行本(ソフトカバー)]

    福満 次郎(著)

    サンプルを立ち読み 発行日: 2022/3/1
    頁数: 238ページ
    ISBN-13: 9784864504430
    定価: 1100円(本体1000円+税10%)


    内容紹介

     比叡の山並が琵琶湖の西岸に沿い、なだらかな稜線を南下させる京都伏見。親鸞(しんらん)がうまれ育った日野寺はここにある。  親鸞は生涯で五回名前を変えた。幼少期は松(まつ)若(わか)丸(まる)、出家して師の慈(じ)円(えん)から範(はん)宴(えん)と言う名を授かり、続いて法然の元で綽(しゃく)空(くう)・善(ぜん)信(しん)となり最後に親鸞と名乗った。物語は松若丸から始まる。  九歳の春早朝、伯父範(のり)綱(つな)と慈円の待つ青(しょう)蓮院(れんいん)へと向かう牛車。それを曳く牛の尿(いばり)の生臭い湯気は、松若丸に堪えられない。 「どうして出家しなくてはならないのか……」  伯父範綱の子は、誰も出家していない。 「両親が早く死に、五人の子総てが伯父に預けられた……」  その事実は、幼い心に重くのしかかっている。 「無事にお着きになりましたか……」  二人を出迎えた慈(じ)円(えん)は、若く才気走って見えた。 「わざわざのお出迎え、痛み入ります」  範綱は腰が折れるほど頭を下げた。その仰々しい仕草は、名門藤原摂関家に対するもの。それというのも、慈円の兄基実(もとざね)・基房(もとふさ)はいずれも摂政関白の経験者であり、今の関白は基実の息子基(もと)通(みち)。そして、三番目の兄兼(かね)実(ざね)は、次期関白と目されているからだ。  慈円は藤原北家の只中にあり、伯父の範綱がどうあがいても及ばない。松若丸は下級貴族の哀れさを、伯父のお辞儀の中に見て取った。 「朝廷に仕えるより、仏に仕えた方が自分に向いているのか……」  へりくだる伯父の姿に、幼いながらそう自覚せざるを得なかった。それでも利発な彼は、思い切って切り出した。 「何事も得心がいかなければ、やる気はありません」  慈円の顔を見上げ、こわばった表情で訴えた。松若丸がいきなり本音を口にし、範綱はあわてた。 「この子は真面目すぎて、少し理屈っぽいところがあります……」  そうとり繕ったが、慈円はなんと大人っぽい児だと驚いた。 「いやいや、なかなかしっかりしたお児だ」  慈円はそう云いつつも、意に沿わず出家しなくてはならない子を不憫だと感じている。一方の範綱は、松若丸の気持ちを薄々承知はしていたが、このまま共に引き返す考えなど微塵もない。伯父として一刻も早く、彼を置いて辞去したい。 「下級官僚とはいえ、昔ながらの文章博士の血は継いでいるはずです」 『学問の日野家』という矜持を持ち出し、後は総てを慈円様にお願いすると言い残し、範綱はそそくさと青蓮院を後にした。(冒頭より)

    目次
    一章   比叡のお山
    二章   法然と式子内親王
    三章   慈円の歌
    四章   玉日姫
    五章   比叡山動く
    六章   興福寺奏状
    七章   流罪
    八章   越後の地
    九章   煩悩再び
    十章   常陸の国へ
    十一章  関東の地
    十二章  親鸞の苦悩
    十三章  再びの都
    終章


    著者について

    1943年1月 中国漢口・日本人疎開地にて生まれる
    本籍地 山口県光市小周防
    1966年 山口大学経済学部 卒業
    1966年 伊藤忠自動車 入社
    2006年5月「小説道元記」出版 日本文学館


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