2023年12月下旬に青山ライフ出版から全国書店で発刊される『情報の運び屋(上巻)情報の路(みち)」(大崎俊彦著 1,350円+税)と「情報の運び屋(下巻)情報の詩(うた)」(大崎俊彦著 1,350円+税)の情報、第4弾です。
本書では「人類は情報の運び屋である」と提言するが、その主張の骨子は、
鴨長明の随筆“方丈記”の世界観と奇妙に一致している。
『情報の運び屋』の著者は、鴨長明“方丈記”の一部を現代風に書き換えてみた。
800年の歳月を乗り越えて、そのまま活き活きとした姿となって、情報たちが非消耗性や耐久性を発揮して蘇(よみがえ)ることに気づいた。
そこで“現代版随筆方丈記”として改作、加筆などによる再生を試みた。
その部分を紹介する。
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「ゆく人の流れは絶えずして、しかも、もとの人にあらず。ネオンまたたく店などは、かつ消えかつ新装して、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある、サラリーマンと企業なども、またかくのごとし。
世界の都の東京に、社屋を並べ、市場を争へる、高き収益、いやしき地位争い、企業の競争は、世々を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし企業はまれなり。
あるいは去年倒産して今年管理会社となれり。あるいは企業買収されて系列会社となる。社員もこれに同じ。ビル街も変わらず、サラリーマンも多かれど、いにしえより見し人は、二、三十人が中に、わずかに一人、二人なり。
朝に出社し、夕に退社するならひ、ただ情報の運搬屋にぞ似たりける。知らず、入社しリストラされる人、いづかたより来たりて、いづかたへか去る。また知らず、仮の職場、誰がためにか収益や売上に心を悩まし、何によりてか人生を喜ばしむる。
その、社員と会社と無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず。あるいは株価落ちて株券残れり。残るといへども紙屑となりぬ。あるいは市場しぼみて株価なほ消えず。消えずといへども終値を待つことなし」
「また、社員と経営者が無常を争ふさま、いはば労使紛争・内部告発に異ならず。あるいは社員辞めて企業残れり。残るといへども市場やマスコミにたたかれる。あるいは企業しぼみても社員なほ消えず。消えずといへども無給の給料日を待つことなし」
随筆“方丈記”【原文】は以下
「ゆく河(かわ)の流れは絶(た)えずして、しかも、もとの水にあらず。淀(よど)みに浮ぶ 泡沫(うたかた)は、かつ消えかつ結(むす)びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある、人と住家(すみか)と、またかくのごとし。
玉敷(たましき)の都のうちに、棟(むね)を並べ、瓦(いらか)を争へる、尊(たか)き、卑(いや)しき、人の住居(すまひ)は、世々を経て尽きせぬものなれど、これを真(まこと)かと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。
あるいは去年(こぞ)焼(や)けて今年は造り、あるいは大家(おおいえ)ほろびて小家(こいえ)となる。住む人もこれに同じ。處(ところ)も変わらず、人も多かれど、古(いにしへ)見し人は、二、三十人が中に、僅(わずか)に一人、二人なり。
朝(あした)に死に、夕(ゆうべ)に生まるる習(なら)ひ、ただ水の泡にぞ似たりける。
知らず、生まれ死ぬる人、何方(いづかた)より来たりて、何方(いづかた)へか去る。
また知らず、仮の宿り、誰(た)がためにか心を悩まし、何によりてか目を喜ばしむる。
その、主(あるじ)と住家(すみか)と無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず。
あるいは露落ちて花残れり。残るといへども朝日に枯れぬ。
あるいは花しぼみて露なほ消えず。消えずといへども夕を待つことなし」