お呼びでしょうか ―私は死神でございます―

この5月、『お呼びでしょうか ―私は死神でございます―』(永井治郎著 青山ライフ出版)が発刊された。

本書は、自殺もしくは自死専門のエリート死神。五つの挿話の主人公に本編の死神が絡み、物語が展開していく。
それぞれの挿話の主人公はすべて六十五歳以上の老人で、これまで懸命に生きてきたが、ときには運悪く、あるいは不条理な定めに翻弄され自ら死を望む。そのシグナルを天上の死神がキャッチし、娑婆に降りてきて、苦しみの負担を取り除き、心安らかに天上に導いていく。普通のおどろおどろしい死神と違った、ソフトな面を持った死神界でのエリート中のエリートである。
その死神が六十六歳から八十六歳までの老人たちの死に様に付き合っていく。

五つの物語に登場する老人たちの悲喜こもごもの人生の終活に、あるときは積極的に、あるときは少し傍観的に、死神が絡み合うという娯楽作品であるが、老いや死について、深く考えさせられる。
テーマは暗いが、それでいて、なぜか明るく、温かい気持ちになれる小説である。

お呼びでしょうか ―私は死神でございます―

お呼びでしょうか ―私は死神でございます―

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admin の紹介

青山ライフ出版 代表取締役。北海道生まれ。1983年早稲田大学教育学部卒。経営誌副編集長などを経て、2005年青山ライフ出版を設立。実用書、エッセイ、小説、詩集、絵本、写真集など幅広い出版物を発刊している。