この5月、日本の大企業にとっては、かなり辛口のビジネス書が発刊されます。
経営の本質を突いたとてもよい本です。
『トヨタは「鉄」、MINIは「楽しみ」を売っている もったいない! 日本企業が気づいていない経営と戦略問題』
(フォーリー・マーク著 SIBAA BOOKS)です。
どんなことが書いてあるか、引用します。
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私にとってトヨタやホンダは「自動車会社」ではありません。トヨタは「製造会社」でありホンダは「エンジニアリング会社」だといつも思っていました。両社とも強みである製造やエンジニアリングに力を集中させましたが、ブランドイメージが不明なために、競争力がある「本当の自動車会社」が出てきたら競争できるかどうか、と若い頃から私は心配していました。(中略)
トヨタは「自動車会社」ではなく、「製造会社」だと思っている私にとって、つまりは、トヨタは単に「鉄」を売っているにすぎません。ある知人は、私がそう言うと「ちゃんと動く鉄だよ」と反論したものです。
一方で、ミニ(Mini)はどうでしょうか。ミニが売っているのは自動車ではありません。「Fun(楽しみ)」、「Funky(型破りな)」、「Cool(格好いい)」というアティテュードを売っています。BMWも自動車を売っていません。BMWは「Sheer driving pleasure(駆けぬける歓び)」や「The ultimate driving experience(究極の運転体験)」というアティテュードを売っています。
日本語でちょうどいい言葉のニュアンスが見当たらないので、私は英語のアティテュード(attitude)という言葉をよくそのまま使っています。直訳の「態度」「姿勢」「心構え」「考え」などはどれもピンとこない。ここで使うアティテュードは特定の「気持ち」「感情」「人格」「性格」「考え方」「生き方」のようなものをすべて包括した表現です。
「情熱」から「創造する」もの
これは単に「ブランディング」や「マーケティング」の問題ではありません。会社のDNA(遺伝子)や存在意義から発生する、経営の根本的な問題です。
トヨタの企業DNAが本当に「製造会社」なら「本当の自動車会社」は自動車の製造をトヨタに委託したほうがいいじゃないか、と三〇年前から私は思っていました。日本企業の技術やエンジニアリングはきわめて高レベルですね。多くの場合、世界一だと思います。しかし企業の経営、戦略、市場理解、顧客理解の面が(特にグローバルで)弱いのです。それが実にもったいない!
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これはどういうことを言っているのか。
アティテュードがなくて、単に拡大を目指しているから、ブランドイメージがごちゃ混ぜになっている、大半の日本企業の現状を指摘しているのです。
これは大企業病の表れではないか?
経営がないのではないか?
とても、もったいないことをしていますよ、と。
アティテュードがなくて、単に拡大を目指している姿は、海外を含めた大きな視点から見るとどのように映るか……。
あれもこれもとごちゃ混ぜになって「売上だけ、利益だけ」と映ってしまいます。
そうなると、ブランドイメージは弱くなります。
日本在住30年の著者は、難しいことは言ってません。
経営の基礎に戻りましょう! と顧客の立場から貴重な提言をしています。
ここで、もう一度原点に戻れば、
日本企業にはチャンスがいっぱいあると主張しています。