大戸屋の三森久実会長が、この7月27日に亡くなった。訃報を知ったとき、まさかと信じられなかった。まだ57歳だというのに。
とても悲しく、寂しい気持ちになった。
三森会長に初めて会ったのは1997年頃だと思う。
経営誌の記者として、西武線田無駅の近くにあった会社に取材に行ったのが最初だ。
今でこそ400店舗もある大戸屋だが、当時はほとんど知られていなかった。
狭い定食屋の片隅のようなところで、三森社長(当時)は、子供のいなかった叔父の養子になったこと。その叔父が池袋で人気の定食屋を営んでいたこと。高校時代は野球に打ち込み、プロ野球選手になりたかったが諦め、卒業後、著名レストランで働いたが、非常に尊敬していた叔父が間もなく亡くなってしまい、21歳で店を継ぐことになったことなどを訥々と話してくれた。
池袋の繁盛店で得た利益で、2店目、3店目と増やしていった。20代の早い段階で大金を手にした。若気のいたりで大きな失敗もした。そうした経験を経て、家庭の味を提供する定食屋というぶれない軸を持った。
家庭で健康によい料理がつくれない時代になったからこそ、そんな定食屋として上場したいとのことだった。
「うちのお店に入って、1人のお客さんが値段や味に満足して、少しでも幸せな気分になれたら、その分だけ世の中がよくなる。だからやるんだ」と、志を語ってくれた。
取材を終えるとさっそく、「上場を目指している定食屋がある!」という記事を書いた。
大戸屋が今、こんなにも増え、多くのファンを得ているのは、根柢にこの志があるからだと思う。