「仕事は楽しいかね?」

「仕事は楽しいかね?」(デイル・ドーテン著 きこ書房)
・ブックレビュー

本書は「試すこと」の大切さを説いている。
今の人生に満足できず、もっと成功したいとか、
こんなはずではなかったと思っている人には、
とても有用なヒントが提示されている。
まさに目からウロコと言ってもよい。

世の中でも有名な成功者と言われている人は、
なぜその成功を手に入れたのだろうか?
多くの人はこう思っている。

その人は並外れた能力や情熱を持ち、
並外れた努力をし、しかも運もよかったのだ。
そういう星の下に生まれた特別な人なのだ、と。

これは間違った思い込みである。
もちろん最低限の才能や努力は必要だが、
同じ人間なのだから、人の2倍も3倍も才能があったり、
努力できたりするはずがない。
誰にだって、1日は24時間しかないのだ。

運のよさも同じ。
同じサイコロを振って、
人の2倍も3倍も当たりを出せる人はいない。

ではどこで差がついたのだろう?

実はサイコロの例でたとえるとわかりやすい。
チャンスをつかむサイコロがあるとする。
成功する人は、このサイコロを何度も何度も、
当たりが出るまで振る。
当たりが出たら、さらに次の当たりを狙う。

われわれ凡人はそれはしない。
その差なのである。

なぜサイコロを振らないのか。
サイコロを振るには、時間やお金や勇気
といった一定の掛け金が必要だからだ。

たとえば6の目が出れば1000万円
もらえるサイコロゲームがある。
ただし1回振るのに100万円かかる。
あなたの全財産は500万円である。

確率は6分の1だからチャレンジすれば得する可能性は高い。
けれども全財産を失って無一文になるかもしれない。
さあ、どうする?

人生のサイコロにはこういうきわどいものがあるから、
多くの人は試すこと(チャレンジ)しないのである。

掛け金の小さいものから高いモノまで、
こういったサイコロを振る機会が無数にあって、
しかも工夫次第で掛け金を小さくしたり、
当たる確率を高めたりもできるのが実際の人生かもしれない。

それが薄々わかっていても、
大半の人はリスクを避け、
安楽にしていたいので何もしない。

というか、チャレンジしなくても生きていけるから
何もしないのだろう。

ただ、みんながそうでは活力は生まれず
衰退する一方である。

そうした中でも、本を出しているような人は
「試す」ということをしている人だと思う。
極端な例でいうと、
ソフトバンク孫正義社長を見ているとよく分かる。
目標を定めて階段を一段一段上るだけでは、
一代で資産16兆円の企業グループをつくるのは不可能。

とにかく次から次へとサイコロを振ってきた。

そして当たりが出ると、
得た資金をさらに大きなサイコロゲームに
どーんと投じて今に至っている。

日本は今、労働人口減による低成長で苦しんでいるが、
今後も経済成長を目指すのであれば、
勤勉な努力家、秀才を養成するだけでは無理がある。

もっと果敢に新しいことにチャレンジしていくような
勇気のある人材が求められるのではないだろうか。

「勇気」と書くと、大げさに感じられるが、
いろいろなことを少し思い切って試して、やってみて、
その成行を楽しむというちょっとしたこと。

そのちょっとしたことをやるかやらないかで、
大きな差が生じるのだと思う。

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admin の紹介

青山ライフ出版 代表取締役。北海道生まれ。1983年早稲田大学教育学部卒。経営誌副編集長などを経て、2005年青山ライフ出版を設立。実用書、エッセイ、小説、詩集、絵本、写真集など幅広い出版物を発刊している。