注目の新刊 モルフィンと人類の歴史

ケシの実より生じたアヘンがわれわれに教えてくれたこと

モルフィンとはモルヒネのこと。
モルヒネとは麻薬であり、医療の現場では麻酔剤として使われている。

そしてモルヒネからはヘロインというさらに強力な麻薬が生まれたが、
すべて元になっているのはアヘン(阿片)である。

アヘンとは、ケシの実の中にある乳白色の液体で、
これが人間の脳に特別な作用を及ぼすことを、人類は古代から知っていた。

古代から現代に至るまで、人類がこの麻薬とどのように付き合ってきたか、
本書は詳細に追っている。

麻薬と書いたが、自然のままのアヘンは恐ろしい麻薬というより、
安らぎを与えてくれるやさしい薬であった。

これを強力な麻薬にしたのは、もっともっとと、
強い効能を求めた人間である。

そして、これを心と体の痛み、
苦しみから救ってくれる麻酔薬としたのも人間である。

19世紀、注射器が発明されたのも、
モルフィンを効率的に投与するためだったという。

当時の医者がやっていたことは、
病気を治すのではなく、苦しんでいる患者にモルフィンを投与し、
楽にしてあげることが主であった。

病気はあくまで自然治癒力で治るのである。

20世紀になり、モルフィンの研究を進めていた科学者は、
人間の脳内にも、モルフィンと同様のものがあることを発見した。

これを脳内モルフィン(エンドルフィン)という。

そこで疑問が生じる。

ケシの実からとったアヘン。
これと同じものが、なぜ人間の脳内にあるのか?

少なくともこれは、植物から両生類、は虫類、そして人間へと
つながっている進化の過程で引き継いできたものと考えられる。

真実は解明されていないが、読後に感じたことは、
モルフィンとは生命体に与えられた癒やしの機構のような気がする

たとえば、人は死ぬとき、ほとんど苦しまないという。

なぜなら死ぬような状態になると必ず脳内モルフィンが出て
意識を失ったり、茫洋としたりするからだ。

人間の体というのは、そこまでよく出来ているのかと思うと、
感動してしまう。

http://aoyamalife.co.jp/review/morufin.html

 

コメントを残す