重くてかさばる紙本の魅力

前の話「視点が変わるとすべてが変わる」と重なりますが、
電子書籍と紙本についても、まったく反対側の視点から、
そのメリットやデメリットが論じられています。

電子書籍を支持する立場の人はこう言います。

電子書籍は軽い、安い、便利!

何万冊ものデータが簡単に持ち歩け、
紙もインクも必要ないから安いし、こんなよいものはない。
紙の本などいずれなくなる。

これは一面、正しいでしょう。
ところが別の視点から見ると、
紙の本は、重くて、かさばって、高いがゆえに
売れているのです。

昔、百科事典がものすごく売れましたよね。

現在でも
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は
発刊、一週間で100万部売れたと話題になりましたが、
ハードカバー、376ページ、1785円です。

この厚み、この重さ、この値段がよいのです。
読んで本棚に置いておきたいのです。

コレクターとまではいかなくても、そういう心理が働きます。

文庫本では購買欲、所有欲が刺激されません。
まして電子書籍では……。

というのも別の一面です。

もっと、この方向から言うと、
もし本がすべて電子になってしまうと、
立派な本棚はどうなってしまうのでしょうか。
立派な書斎はどうなってしまうのでしょうか。

これらを必要とするのは
重くてかさばる紙本なのです。

以上のような意見を述べたところ、

時代はどう変わろうとも、私は断然紙の本がいいというTさんから
以下のような意見をいただきました。

☆☆☆☆

紙の本がよい理由

1.いつでも、どこでも、どんな場合でも読める。
  電車、寝転んで、公園のベンチで、歩きながら

2.付箋、折り曲げ、重要な箇所に印、おや?と思ったときに
  即、前後にいける。

3.目次から、読みたい箇所にすぐいける。

4.本棚において、自分の知識の財産として確認できる。

5.再読したい時に、すぐ手に出来る。

6.大切な箇所を切り抜いて、ノートに貼り、ベスト文章として保管できる。

7.本の各ページに、これはと思った場合に、疑問点など、書き込みが出来る。

この場合は、読み手の場合ですが、
では、本を作る場合はどうでしょうか。

1.厚いほうが<量感>気持ちがいい<薄い本は読む気が起きないです>

2.本棚に並べられるので満足感が得られる。
  本棚に自分の本を10冊も並べられたら、素人にしては、最高の気分でしょうね。

3.いつでも目にできる事から、達成感が生まれる。
  <いや~、これが俺の本か!>

4.自分と本の一体感が常にあるので、新しい本を作りたくなる。

5.持ち歩いて、自分の分身として知人等に知らせられる。
 「今度、自分の本を出版したんですよ!」
 「え~?、ほんと」

6.「自分の本ができたんだ!!」
  この感覚は、紙でないと絶対生まれないのではないでしょうか。

7.表紙・・・実はこの本の表紙の力は大きいと思います。
  タイトル、デザイン、文字のサイズ、サブタイトル、
  これらから来る満足感は、電子本では無理でしょう。

私は、過去、ネットで作品を公開したりしましたが、満足できませんでした。
何か、自分が、自分の分身が、作品がどこか遠くに行ってしまったような感覚に陥りました。

紙の本のすばらしさは、絶対ではないでしょうか。
特に、趣味で書いたり、初版本とかの場合は。
プロになれば、これはこれで、電子出版も一つの有効な手段になるでしょうが。

☆☆☆☆

以上、Tさんの意見でした。

この中には、話の前後を行ったりきたりするなど、電子書籍でもできることがありますが、直感的にぱっとはできないのです。

このように考えると、紙の本というのは本来、とても贅沢なものなのですね。

カテゴリー: 日記   作成者: admin パーマリンク

admin の紹介

青山ライフ出版 代表取締役。北海道生まれ。1983年早稲田大学教育学部卒。経営誌副編集長などを経て、2005年青山ライフ出版を設立。実用書、エッセイ、小説、詩集、絵本、写真集など幅広い出版物を発刊している。

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