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  • 9月8日のラプソディー
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  • 9月8日のラプソディー
    [電子書籍]

    蒼為 静 (著)

    サンプルを立ち読み 発行日: 2019/2/15
    頁数: 88ページ
    ISBN-13: 9784864503181
    定価: 1090円 (税込・電子書籍)


    内容紹介

    学生時代に初めてヘルダーリンの詩を読んで以来、自分の進むべき道は文を書く以外にないと決意、新人賞に投稿し続けほぼ二十年近い歳月が経過した。己に文才がないと悟るのに二十年を要したのは愚鈍という他なく、このまま投稿し続けるということに何の意味があるのかと思い、文を書く道を断つことも考えたものの、ドゥルーズというフランスの哲学者が「深刻なのは砂漠に生を受けた若い作家たちの状況だ」と『記号と事件』(宮林寛訳 河出書房新社 一九九六年刊)で語っていたことを思い出し、今まで自分が作ってきた作品が全く無価値と思うこともできず、少なくともこの作品を必要としている孤独な読者が二、三人はいるのではないかと思い、自費出版することにした。むろん自分はもう「若く」はないし、そもそも作家以前の素人であり、さらにドゥルーズが強調するような「新しい文体を作る」高等技芸を持ち合わせているわけでもない。ようするに自分を取り巻く環境は「ニセの砂漠」だったと謙虚に受け止めるべきところだろう。加えて多くの人々が暗に期待するような聖者の如き清貧な生活を送ってきたわけでもなく、時給千円程度の給料で図書館司書を勤め、実家暮らし、少しでもお金が貯まれば書籍を買い、格安の風俗にも通い、さらに安い株まで手を出すという俗塗れな生き方をしてきている。また就職氷河期から逃げた負け犬とさえ思う人も少なくないだろう。
    このような生き方を社会学者が「パラサイト」と呼び軽蔑するのも当然である。
    とはいえ約二十年、自分なりの努力はした。でもどうやらそれが「ニセの砂漠」を耕す狂った農夫の真似事の域を出ていなかったということらしい。いくら努力をしたと言い張ったところで、結果が実らない限り、それを努力と呼ぶのは不謹慎に値するのだろう。
    フランスの演劇家アントナン・アルトーが言っていた。「努力による存在とは一つの残酷です」(安堂信也訳 白水社 一九九六年刊)と。この発言は何も演劇だけでなく現代社会を生きる人々の生の全てを外延とする宣言のように聞こえて仕方がないが、アルトーからしてみたら、そんな安っぽい人間ドラマの次元に自分の残酷宣言を狭めるなと言われそうだし、そのような甘い認識が、自分を作家以前の素人から、「ニセの砂漠」から脱け出せなくさせている要因かもしれない。どうであれ、誰も作家としての自分を必要とはしていない時代において自分の作品が読むに値すると思うのは悲劇というより、喜劇というより、勘違いも甚だしい愚劇というべきところだろうから「ドン・キホーテ」でも再読してみようかと思う。「間違っているのはドン・キホーテではない! 風車である」とマラルメが言ったらしいが、もしもそれが事実ないし真理ならば今後、ベケットが「言い間違えた」ように「最悪」を目指してもっと上手に、さらに下手に「失敗する」べきなのかもしれない。(あとがき より)


    著者について

    1976年東京生まれ。
    現在、図書館勤務。


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