直木賞作家の伊藤桂一氏が10月29日に亡くなった。
99歳で老衰とのこと。
新聞の夕刊で訃報記事を見つけ、はっとした。
オートバイを四谷駅近くの広い歩道に止めた時の
風景や空気感まで、30年前のことが蘇った。
30年前、小説家養成講座に通っていて
そのメイン講師が伊藤桂一先生であった。
その頃すでに、私からすると優しいおじいさんという感じであった。
講座とは別に、稚拙な手書き原稿用紙を渡したところ、
わざわざ丁寧な感想を書いて返送してくださった。
考えてみれば、私のつたない小説を読んでくれた唯一のプロ作家であったが、
生意気で無礼な若者であった私には、
そのありがたみがよく分っていなかったのが悔やまれる。