先人から受けた恩恵を後輩に返す

松島先生を囲む会が終わった後、
もう一つ、出版記念会がありました。

『モルフィンと人類の歴史
ケシの実より生じたアヘンがわれわれに教えてくれたこと』

http://aoyamalife.co.jp/review/morufin.html

を出された天木嘉清さんが、もう1冊、
「見て考えて麻酔を学ぶ」(中山書店)の改訂第2版が出たのに
合わせて、出版記念会を開かれました。

東京慈恵会医科大学の医師である天木さんが、
後輩医師たちに向かって、
会の最後にこんなことを言いました。

とても感銘を受けたので紹介します。

「私たちは今、とても高度に発達した薬や治療法を用い、
医療活動をすることができています。
それによって患者さんから感謝されたり、
報酬を得たりしています。しかし、それは誰のおかげか。
その方法を開発してきた先人たちのおかげなのです。
だから、われわれもその利益を享受するだけでなく、
価値あるものを1つでも、2つでもつけ加えて、
紙に書き、後輩たちに伝え残していくべきではないか。
それをしないでいるのは無銭飲食と同じではないか」
と言いました。

これは医学に限ったことではないです。

恩恵を受けた者は、それだけのものを
何らかの形で返さなければならない。
その考え方が素晴らしいと思いました。

幸せに生きることができた。
ああよかった。
はい、さようならと死んでいくのか。

しかし、生きるだけで必死、精一杯という人もいる中で、
誰のおかげで幸せに生きることができたのか。

恵まれた環境にある人は考えなければいけません。
そう考えると、意識が変わってくる。

先人とは親や、そのまた親であり、
それをとりまく世の中の先輩の方々です。

それらの方々のおかげで今日があるのなら、
これからは自分も後輩のためにできるだけのことをしたい。

価値あるものを残すことは、
そういう目的にかなっているので、
そのための努力もまた充実したものになるでしょう。